南信濃・飯田線秘境駅探検記 ’12.5


 TAKAは旅行が好きです。
 アニキャラなどの着ぐるみをやっている以上、基本オタクの類ではあるのですが、家に籠もるより外を出歩く方が好きな質で。仮に時間が無くとも、家で地図を広げては「ここに行ったら、どんな景色が眺められるのだろう?」と想像するだけでも楽しいものです。
 今回、鉄道マニアの間では秘境駅として有名な信州飯田線の田本駅を訪ねて参りました。
 私は鉄道マニアではないのですが、異色な駅であるということは随分昔から聞いていまして、いつかは行って、どんなところか実地に見てきたいと思っていたのでした。
 なにが異色かというと、駅の周囲に人が住んでいない!
 最寄りの人家ですら、20分歩いていかなきゃたどりつけないという、とんでもないところにある駅なのです。何だって、そんなとこに駅をわざわざ作ったんだろーか・・・?
 (^^;)
 と言うことで、ずっと興味津々でいたのでした。今回、たまたま平日に休みが続いて取れたこともあり、宿題にしていた秘境・田本駅を探検に行ってみようと思い立ちました。

 そして、ただ単にブラブラ行くだけではなく、それはそこ、Dollerたる者ののたしなみで、着ぐるみを持っていくことも怠りません(w
 レイを連れて……何故、秘境駅に綾波レイなのか? まして何故山奥でプラグスーツ?
 ・・・それは神のみぞ知る世界(w
 だって・・・「さて、誰を連れて行こうか?」と考えて、すぐ脳裏に浮かんだのが綾波で。どうしても、それ以上に他は誰も浮かばなかったんです。何故か(^^;)
 綾波の孤独と無人駅、無機質な駅という構造が綾波の住むマンションを連想したのでしょうか? ともかくも、自分でも訳分かりませんが、綾波と連れ立って行って参りました。

 さて、その田本駅は長野の辰野から愛知の豊橋へ向かう信州飯田線の無人駅で、長野・愛知の県境近く、天竜川に山が押し迫り急峻な渓谷になったところ、天竜峡でも一番奥まった崖の中腹にあります。さて、近くまでは自動車で行ったものの、そこへたどり着く最後の30分ほどは、こんな崖沿いの山道を延々ドライブしなきゃ、近づけません。


 そして下の地図を見てもお分かりいただけるように、なんと、駅前へ出る車道がありません! バイクでも自転車でも行けません。駅へ降り立つには、歩いていくしかありません! 

大きな地図で見る

 駅に最も近い民家の近くに自動車の待避場がありまして、とりあえずそこへ自動車を駐めます。ガードレールの切れたところに「田本駅」を示す小さな標識があります。ここが駅へ向かう歩道の出発点になります。ここから天竜峡の谷底目掛けて下っていった先に、目指す田本駅が待っています。


 かくして、勇者・TAKAは綾波を封印した鞄を肩に担ぎながら、秘境・田本駅へ向かって出発しました。
 両脇にジャングルのように雑草が生い茂っておりますが、さすがに「駅前通り」です。足下はコンクリートで固められています。
 軟弱なアスファルト道路なんぞとは違う、立派な作りです。


 立派なはずの道です。
 ・・・しかし、気持ち細くなってきているような、どんどん森が深くなって、先が見えなくなっていくような・・・

 本当に、駅前通りなのか? 不安になっていく展望。

 コ、苔むしてはいますが、間違いなく駅前通りのはずです!
 だから、数年もすれば右の土手の上にはジャスコが、左の木々は伐採されてマルイが出来ているはずです。きっと・・・・


 ヤ、ヤバイです、駅前通り!
 道路の下の土が完全に崩落して無くなってます(汗)
 右手の崖は岩盤剥き出し。落石がきそうです!

 くれぐれもサンダル・ハイヒールで行かないように。

 心細くなりながら、駅前通りを更にトボトボ下っていく先、木々の合間に突如人工物がぽっかり姿をあらわしました。
 あのコンクリートで固められた壁面に、へばりつくように、線路に挟まれている段があります。遂に、目指す田本駅へ到着です。

 スタート地点の最寄りの人家から歩いて下って15分かかりました。
 ホントなんで、こんなところに駅が必要なんですかいな!? 地元の人、この駅を利用しているのかなぁ??? 下りで歩いてきて15分ですよ。帰りの、帰りの登り道は20分かかりました(私は登りは強い方ですので、これくらい。30分くらいかかる人もいるようです)。 周囲は人家はおろか、人影も全くありません。

 駅に降り立ちましたが、しーんと静まりかえっています。おそらくは周囲2km以内に、私以外誰も人はいないのですから。
 久しぶりに、自分の心臓の音が聞こえるほどの静寂に浴しました。。。
 ここが、伝え聞いてきた秘境駅ですか。見事に、なんにもない! (^^)


 さて、ただの旅行者なら、ここでホーム中程の待合室のベンチに座って、包みを開いてお弁当食べて、ほうじ茶を飲んで一服、となるところでしょう。
 しかし私にはまだ、遠大な計画がある。そう、綾波に着替えてセルフロケを敢行すること。 それにこの駅にはトイレがないので、余計なものを胃袋に放り込んで、ほどなく催してきたりしたら大変。
 このときの時刻は11:20でした。
 待合室の時刻表を見ると・・・

 フムフム。11:51の天竜峡行きが行ってしまえば、あとは13:09の豊橋行きまで、78分は、列車が来ない。従って人は来ない。
 ・・・私みたいに、平日にもかかわらず、気まぐれで歩道を降りて駅へ来る人間がいるかもしれないけれど、そのときはそのときで。
 (たぶん、山奥の無人駅でアニキャラに扮してるよーな恐ろしいヒトには関わるまいと、向こうから逃げ出してくれることだろう、ウンウン(w そう、勝手に良い方向へ予想)
 ときにまだ、若干時間があったので、三脚を立てて撮影するポイントを確認し、更に待合室で荷物を解き、補整下着などを服の下に装着しはじめます。こうして列車が通り過ぎた後の着替え時間の短縮・撮影時間の最大化をはかります。
 おおよそ、補整下着を着込み、上着を羽織った頃、遠くからカタコトと列車の走ってくる音が聞こえてきました。
 11:51着天竜峡行きの列車がやってきます。
 服を整え、カメラを持って、「いかにも」気まぐれな旅行者か鉄道マニアの「フリ」をして列車を待ちかまえます(^^;)

 列車キター!


 距離を取ってカメラで列車を撮影していると、乗客も車掌も「ああ、いつものマニアか」といった感じで、私の方をチラとみるだけ。


 そして、何事もなく列車は発車していきました・・・・。ふたたび、ホームに静寂が訪れます。
 「よし、やるぞ!」
 列車も過ぎ、まったく人のいない今から80分あまり。チャンスのときが来た!
 待合室へ駆け込み、肌タイ、プラグスーツと急いで着込み、袋から綾波面を取りだして深呼吸。心臓はこれからの期待と誰か来たらどうしようという不安と、慌てて着替えた息切れでドキドキ。

 綾波面をかぶったときでした。

 コッコッコッ・・・・
 ホームのコンクリートにかかとが打つかる足音が聞こえる!
 うわああああ! 誰も来るはずのない無人駅へ 誰か来た!?
 慌てて面を外して待合室にしゃがみ込んで、身を隠します。
 じっと聞き耳を立てていると・・・・なんだ、足音じゃなくて、それは自分の心臓の音だった。
 面をかぶって、耳元に反響した心臓音が足音に聞こえていただけでした(笑)
 いやー、でも、本当に人の足音そっくりに聞こえたんですよ・・・びっくりした(^^;)

 かくして、ホームに三脚を立て、待合室から出た綾波レイを撮影。

 誰も人はいない。撮影サポートもいない。駅でたった一人、80分あまりのロケ撮影開始です。
 それでもしばらくは、「今聞こえているのは、ひょっとして心臓の音じゃなくて、本当に足音じゃないだろうか?」と、初めのうちは心臓ドキドキの音か、足音か、何度も気になって確認しながら開始したセルフロケでしたが。
 ガラス窓には「警察官立寄所」の札があります。本当に来たらどうなっていたかな・・・・?

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